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解法に幅を持たせる

 

算数の大半の問題には、その問題を最短距離で解ける解法があり、その解法を吸収していくことが、基本的には最も効率的な学習法ということになります。

ただ最も効率的に見えるその学習法は、通常の模試では結果が出やすいのですが、難関校入試(過去問、学校別模試を含む)になると結果が出づらくなります。

通常の模試では基本、標準、応用問題が比較的バランス良く出題されますが、難関校入試では応用問題が重点的に出題されます。

最短距離の解法を吸収していく学習法は、基本、標準問題には対応しやすいのですが、応用問題には対応できないことが多く、それが上記のような結果につながります。

(最短距離の解法を覚えるパターン学習で対応できる問題は結果的に正答率の高い基本、標準問題になり、パターン学習で対応しきれない問題が結果的に正答率の低い応用問題になっている、という見方もできます。)

難関校入試に強い(応用問題に強い)受験生は「理詰めで考える」「複数の視点を持つ」という能力に長けています。

一方で、通常の模試には強いけれど難関校入試に弱い受験生は、理詰めで考える能力はあっても複数の視点を持つことは苦手で、一つの解法に固執する、言い換えれば「解法に幅がない」という傾向があります。

解法に幅がある受験生は、応用問題を解いて行き詰まった場合でも、一歩引いて別の視点から再アプローチすることができます。

逆に解法に幅がない受験生は、行き詰まった場合に一歩引くことができず、そのまま同じアプローチを続けて、時間を消耗する結果になることが多いです。

解法に幅を持たせるには、普段から最短距離の解法だけでなく、複数の解法に積極的に触れていくことが有効です。

解法に幅を持たせるというのは「最短距離でない(一見)遠回りな解法を身につける」ことでもあり、短期間で結果を出すためには
必ずしも効率的ではありませんが、将来的に応用問題を攻略するためには必要不可欠です。

私は指導経験の浅い頃、無駄をそぎ落として最短距離の解法を徹底して教え込んでいた時期があります。

その指導法は一見すると強力で即効性があり、通常の模試や中堅校入試での成功率は高かったのですが、難関校入試での成功率は低く、ほとんど実績を出すことができませんでした。

その後、最短距離の解法にこだわらず、複数の解法を意識する(解法に幅を持たせる)指導法に変えたのですが、応用問題に強い生徒が多くなり、難関校入試での成功率も大幅に改善しました。

私がこれまでに執筆した本でも、比、速さの2冊については敢えて遠回りな解法を多く盛り込んでいますが、これは過去の私の失敗を踏まえたものでもあります。

難関校を目指す受験生は、即効性はなくても「解法に幅を持たせる」ということを意識してほしいと思います。
 

 

※本記事は、メールマガジン(2017年9月3日配信)の内容を転載したものです。

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