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先取りと予習の違い

一般的に「予習」という言葉は浸透していますが、「先取り」と言われるとイメージしづらいかもしれません。「先取り学習がいい」と聞くと「予習すればいいのか」と解釈する方も多いと思いますが、少し意味が違ってしまいます。「先取り」は「予習」と何が違うのでしょうか。

大学受験の例で言えば、学校の翌日の授業範囲を大雑把に学習しておくことは「予習」ですが、高校2年までに高校3年範囲を学習することは「先取り」ということになります。未習範囲を事前に学習するという意味ではどちらも「予習」ですが、数ヶ月~1年分を前倒しで学習するような極端な予習は「先取り」ということになります。中学受験でも、塾の次回の授業範囲を学習することは「予習」、大幅に前倒しで学習することは「先取り」という感じになります。

方法さえ間違えなければ、予習はすべての受験生にとって有効な手段です。予習の目的は「授業を理解しやすくする」ことにありますが、これは成績状況に関係なく達成することができます。例えば塾の授業に全然ついていけないという場合、事前に授業内容を軽く学習して「取っ掛かり」を作っておけば、予習をしない場合に比べて確実に授業内容が理解しやすくなります。

一方で先取りの目的は「受験勉強全体の効率化」です。先取りを破綻なく進められれば「塾の授業・課題が復習の役割を果たす→塾の課題にかかる時間が短縮されて余剰時間が生まれる→その時間をさらに先取りに充てられる」というサイクルが生まれます。そして、この「常に先行投資を繰り返す」というサイクルが加速されれば、他の受験生に対して圧倒的な格差を作ることができます。

ただ注意すべきなのは、先取りは万人向けの方法ではないということです。例えば塾の授業についていけていない状態で先取りに取り組んでも、言い方は悪いのですが空回りするだけで成果は出ないでしょう。まずは習慣的に予習を行って塾の授業を余力をもって理解できるようになり、基礎体力がついたところで予習の範囲を(数回分先の範囲など)少しずつ広げていき、それでも余力が生まれれば本格的な先取りに取り組む・・・というような段階を踏むのが現実的です。
 

​※本記事は、拙著『中学受験を成功させる算数の戦略的学習法・難関中学編』の内容を転載したものです。

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